虹の色、いくつ見える?|見え方が人によって違う意外な理由

虹の色、いくつ見える?|見え方が人によって違う意外な理由

空にかかる虹は、誰にとっても美しいもの。でも実は、「何色に見えるか」は人それぞれ違うって知っていましたか?
視力の問題? いいえ、そう単純ではありません。虹の色数の違いには、目の構造や脳の認知、そして文化や言語までもが深く関係しています。
本記事では、「なぜ虹が人によって違って見えるのか?」という素朴な疑問に迫りながら、色覚の個人差や脳の処理の不思議、そして世界の虹の“色数感覚”の違いまで、わかりやすく解説します。
見慣れた景色が、ちょっと違って見えてくるかもしれません。

目次

虹は何色?──そもそも「色数」に正解はあるのか

「虹は何色ですか?」という質問に、多くの日本人は「7色」と答えるでしょう。これは、小学校の理科などで「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」と教わった影響です。
しかし実は、虹の色数には“絶対的な正解”があるわけではありません。

虹は、太陽光が雨粒によって屈折・反射・分散されることで現れる自然現象です。光が分かれると、可視光と呼ばれる“人間の目に見える範囲の波長”が広がり、それがグラデーションとして空にあらわれます。
つまり、虹は連続したスペクトルであり、色の境界は曖昧。私たちはその中から、「どこからどこまでを1色」とみなすかを、目と脳と文化で判断しているのです。


学校で習う「7色」は日本だけ?

日本の学校教育で虹が「7色」と教えられるのは、明治時代に西洋科学が取り入れられた影響です。特にニュートンの「光のスペクトルは7色」という説が元になっています。

ニュートンは本来、光を「無限の色の連なり」として捉えていましたが、当時の音楽理論(ドレミファソラシの7音階)に対応させて、便宜的に7つに区切ったと言われています。

実際、国や文化によって虹の色数の数え方は異なり、アメリカやイギリスでは6色、ドイツでは5色とすることもあります。
また、「藍色(あいいろ)」を1色として認識する文化が少ないため、「日本特有の数え方」とも言えるのです。


世界には「3色しかない虹」と答える人もいる

さらに興味深いのが、世界の中には「虹は3色」と答える文化や民族もあるという点です。

たとえば、アフリカのナミビアに暮らすヒンバ族は、色の区別に使う語彙が非常に限られています。そのため、虹を見ても「赤・白・黒」といったごく少ない色でしか表現しません。
また、太平洋諸島の一部の言語でも、色を表す言葉が3~4色しか存在しないことがあり、虹の色数の認識もそれに準じて少なくなるのです。

これは、目の機能の問題ではなく、「どの色を“区別する必要があるか”」という文化的・言語的な背景に由来しています。
言葉がなければ、色を認識しづらい──この事実は、虹の見え方が「生物学」と「文化」の両方に深く関係していることを示しています。

人によって虹の色数が違って見える理由

人によって虹の色数が違って見える理由

同じ空を見上げているのに、「虹の色が◯色に見える」と感じる数は人それぞれ違う──そんな経験をしたことはありませんか?
この違いには、「目のつくり」「脳の認知」「生まれ持った色覚の特性」といった、複数の要素が関係しています。
つまり、虹の見え方は**“人の数だけバリエーションがある”**のです。


鍵は「目の構造」──視細胞の数や感度の個人差

色の識別には、目の中にある「錐体(すいたい)細胞」と呼ばれる視細胞が関わっています。
この錐体細胞は主に3種類あり、それぞれ赤・緑・青の光を感じ取る役割を担っています。

しかし実際には、この細胞の数や分布、感度は個人差が大きいことがわかっています。
ある人は赤に敏感、ある人は青に鈍感…といった差があり、結果的に「同じ光のスペクトルでも違った色として認識する」ことになります。

また、稀に「4種類目の錐体細胞」を持つ“テトラクロマット”と呼ばれる人もおり、一般人よりも多くの色を識別できるとされています。
こうした「目の構造の違い」が、虹の色数の違いに直結しているのです。


「脳の処理の仕方」でも色の識別は変わる

たとえ目が光の情報を同じように捉えたとしても、「それをどう認識するか」は脳の働きに左右されます。
人間の脳は、過去の経験や言語、文化的背景によって、「色をどう“分類”するか」を無意識に調整しています。

たとえば、連続するグラデーションの中で、「このへんで“青”と“藍”を分けよう」と判断するのは、生理的な反応というよりも“認知的なルール”
つまり、どこまでを1色とみなすかは、脳の判断次第なのです。

また、加齢や疲労、注意力の違いによっても色の識別力は変わるため、同じ人でも“そのときどき”で虹の色数が変わる可能性すらあります。


色覚異常・色弱の場合はどう見えるの?

虹の色数の見え方を大きく左右するのが、「色覚異常(色覚多様性)」の有無です。
日本人男性の約5%、女性の約0.2%が、何らかの色覚異常を持っているといわれています。

代表的なのは、**赤と緑の区別がつきにくい「赤緑色覚異常」**で、虹に含まれる色の中でも「橙〜緑あたり」の色分けが困難になります。
その結果、虹全体が「少し色の薄い帯」に見えたり、色の境界が曖昧に見えることがあります。

ただしこれは「見えない」わけではなく、「色の感じ方・捉え方が異なる」だけ。
視力と同様に、色の世界にも“多様性”があるという理解が広がりつつあります。

「見える色数」はテストできる?

「見える色数」はテストできる?

「虹の色って、あなたは何色に見える?」──そんな問いに対して、正確に答えられる人は意外と少ないかもしれません。
そもそも虹の色数には正解がない上に、人それぞれの目と脳の“感じ方”が違うからです。

とはいえ、自分がどれだけ色を認識できているのか、**「色覚のタイプ」や「色彩感覚の傾向」**を知る方法はいくつかあります。
簡単なチェックから本格的な検査まで、さまざまな方法で“あなたの見える色数”を探ってみましょう。


虹の色数診断でわかる「あなたの色覚タイプ」

近年注目されているのが、「虹の色数テスト」や「色彩識別力チェック」といったオンライン診断です。
画面上に虹のグラデーション画像を表示し、「いくつの色に分かれて見えるか」を問う形式が一般的で、
以下のようなことがわかります。

  • 錐体細胞の反応傾向(例:赤系に強い・青系に鈍い など)
  • 色の境界をどこで区切るかという脳の認識パターン
  • 色弱の傾向があるかどうかの簡易チェック

さらに本格的に知りたい場合は、眼科や色覚専門の検査機関で「PIP検査」「アノマロスコープ検査」といった医学的な色覚検査を受けることもできます。
これにより、「一般的な3色型」「色弱型」「希少な4色型(テトラクロマットの可能性)」などの判断が可能になります。


色彩感覚はトレーニングで変わるって本当?

一度身についた色の感じ方は固定されると思われがちですが、実はある程度の「色彩感覚」は鍛えることができます。

特に効果があるとされるのが、「色を意識的に見分ける訓練」や「配色を学ぶトレーニング」です。たとえば:

  • カラーリングアプリや色彩検定の問題集で練習する
  • ファッションやデザインの配色ルールに触れる
  • 自然の色を観察して、“微妙な色の違い”に気づく習慣をつける

これらの方法は、色覚そのものを変えるわけではありませんが、**脳が色の違いを「認知しやすくする力」**を高めてくれます。

また、モニターの明るさや照明環境、目の疲労具合によっても色の見え方は変わるため、「整った環境で見る習慣」を持つこともトレーニングの一環になります。

「見える色数」は、生まれつきだけでなく、意識の持ち方や経験によっても少しずつ変化していく
それこそが、虹の色に「あなたらしさ」が現れる理由なのかもしれません。

知っておきたい|色の知覚と文化の違い

知っておきたい|色の知覚と文化の違い

虹の色は物理的には連続した光のスペクトルにすぎませんが、「何色に見えるか」「どこで色を分けるか」は、単に目の機能だけでは決まりません。
そこには、**文化や言語、社会の価値観といった“環境的な要素”**が大きく影響しています。

つまり、虹の色数に「個人差」があるのと同じように、国や地域によっても虹の見え方には違いがあるのです。


「何色あるか」は言語と文化の影響を受ける

人間が色を認識するとき、「その色に名前があるかどうか」が大きなカギを握ります。
たとえば、細かな青の違いを表現できる言語を持つ文化では、「青」と「藍」を別の色として認識します。
一方、その区別がない文化では「同じ青」にしか見えません。

この現象は「言語的相対性仮説(サピア=ウォーフ仮説)」とも呼ばれ、
**色の分類が“目で見たまま”ではなく、“言語によって整理される”**ことを示しています。

実際に、ロシア語では「薄い青(ゴロブイ)」と「濃い青(スィーニー)」を別の単語で表現しますが、英語ではどちらも “blue”。
この違いが、実際の色彩認識の仕方にも影響を与えていることが、心理学や認知科学の研究でも明らかになっています。


日本と海外で虹の色が違う理由

日本では、虹の色を「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」の7色で教えられるのが一般的です。
これは、明治時代に導入された西洋科学と、もともと日本にあった伝統色の繊細な感覚が融合した結果とも言われています。

しかし、世界では必ずしも「7色」がスタンダードではありません。
たとえば:

  • アメリカ・イギリス:6色(藍を含めない)
  • ドイツ:5色(赤・黄・緑・青・紫)
  • アフリカやオセアニアの一部:3~4色のみ認識

これは「藍色」という中間色を“独立した色”とみなす文化が限られているためです。
日本語には「藍」や「群青」など青系統の細かな色表現が豊富にあり、それが虹の中にも細かい区別として反映されています。

また、日本の浮世絵や伝統工芸には昔から繊細なグラデーションの表現が多く、微妙な色合いを見分ける文化的土壌が育ってきたことも、虹を7色とする背景にあるのです。


虹の色数は、科学だけでなく言葉と文化の“かたち”でもある
同じ空にかかる虹でも、その美しさの捉え方は国や時代によって変わる──それこそが、色の不思議であり面白さなのです。

まとめ|虹の見え方は“あなたの世界の見え方”そのもの

まとめ|虹の見え方は“あなたの世界の見え方”そのもの

虹は、誰にとっても特別で美しい自然現象ですが、「何色に見えるか」「どこまでが1色か」は人によって異なります。
それは、目の構造の違い、脳の処理の仕方、そして育ってきた文化や言語の影響が複雑に重なっているから。

つまり、虹の見え方には**“その人らしさ”が自然とあらわれている**のです。
虹を見るという体験は、単なる視覚現象にとどまらず、自分の「感じ方」や「ものの見方」を映し出す鏡とも言えるでしょう。


目と脳の不思議を知れば、もっと景色が面白くなる

普段なにげなく見ている色の世界も、その背景にある「目と脳の仕組み」を知るだけで、ぐっと興味深くなります。
たとえば、「今日見た虹はなぜこう見えたのか?」「以前より色がはっきり感じられたのはなぜ?」と、自分の感覚に意識を向けることで、毎日の風景が少し豊かになるはずです。

色の識別や見え方に「正解」はありません。
だからこそ、自分の見ている世界は“かけがえのない一枚の絵”
そのことに気づけると、虹だけでなく、夕焼けや木漏れ日、街の灯りまでもが、ちょっと特別なものに感じられてきます。


他の人の見え方にも、ちょっと想像を巡らせてみよう

あなたが「7色」に見える虹を、誰かは「5色」と感じているかもしれない。
それでも、どちらが正しいというわけではありません。
大切なのは、「自分と他人では見え方が違う」ことを受け入れ、想像できることです。

色の世界に限らず、考え方・感じ方・とらえ方にも多様性があるということ。
虹の見え方をきっかけに、相手の世界に少し思いを寄せてみる
それだけで、人との関わり方や日常の風景が、より優しく、豊かなものになっていくはずです。

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